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DEFの家の耐震性能について②
- ほっしー
- 八ヶ岳営業所
前回に引き続き自然素材でつくるDEFの家が地震に強いワケをご説明していきたいと思います。
【本物の木の柱は割れます。】
アトリエDEFは建物の構造材に宮城県の杉の木を使っています。 よく見ると太い梁の真ん中にはビビ割れが入っていますね。
木が乾燥するとこういった割れが入りますが、皆さんはこれを見て「割れてるけど大丈夫?」「なんだか割れているのカッコ悪いな」って思ったりしませんか?
木材が乾燥して割れるのはごく当たり前のこと。 しっかりと外側に割れが入っているほどきちんと乾燥した強い柱や梁だと思って私たちはとても安心します。
タイルやコンクリ―ト、人工的に作ったプラスチック等の割れとは全く意味が違います。
そして人工的な柱「集成材」と呼ばれるものもあります。 下の写真のような5枚ほどの板を接着剤で圧着して一本の柱にしたものです。
集成材の特徴は「割れたり曲がったりしない柱」として見た目が良いと言うことが挙げられます。 またそういった特徴のために「施工や加工がしやすい」とも言えますね。
私たちDEFではもちろん集成材は使いません。 なぜならば「接着剤」を使わないからです。
また、集成材に使われる板状の木はどこの国の何の木か、そしてどこの誰がどんな加工をしてつくったのかがさっぱりわかりません。 色も真っ白なのでたぶん丸太の外側のまだ年齢の若い部分を組み合わせて作られているはずです。
そういったことで価格も安く手に入るので、現在では集成材は一般的な住宅会社の木造の家づくりで多く利用されています。
【金物でつなげなくても大丈夫?】
そうすると・・・「本物の木は家が建った後も割れたり、少し曲がったりねじれたりするのは大丈夫なの?」と思われるはずです。
自然の素材のそういった部分に不安を感じている方のために、少し前向きになってもらうような話をしたいと思います。
私たちは柱や梁を接合する部分にボルトや金具をあまり使いません。 これは「木組み」と呼ばれる日本の伝統的な工法です。
またまたそうすると・・・「木を組んでいるだけだと、地震がきたら木がスポっと外れたりしないの?」と思いませんか? 自分はちょっとそう思っていました。
しかし、そうならないんですね。 本物の木同士の材料は、割れたり少し曲がったりねじれたりする性質があるので、多少隙間があったとしても組み終わってからお互いがギュッと締まり合って外れなくなるのです。 「木組み」は木の特性を活かし、非常に高い耐震性と耐久性があります。 まさに地震の多い日本の風土にも適した工法だと言えます。
本物の木ってスゴイですよね。 ちょっと感動します。 DEFの家は「自然のモノを自然なつくり方」で地震に強い家にしているのです。
ちなみに集成材を使った建物では、接合部にいろいろな金物を使って建物の強度を上げています。 ですからこちらの建築も「人工的なモノは人工的なつくり方」で地震に強い家にしています。 下の写真は集成材と合板の建築現場です。
自然の杉の木の持つ特徴をもう少しご説明します。
DEFの杉の柱や梁は全て木の年輪の一番中心の部分を使っています。 こういった材料を「芯持ち材」と言います。 切った丸太の断面を見るとよくわかりますが、真ん中の辺りは赤っぽい色をしていて、外側は白っぽい色をしています。
下の写真の木は約50歳位の木ですが、歳を重ねて硬く丈夫に育った50歳の部分が木の中心ということですね。 この部分は天然の防虫成分も含んでいます。
ちょっと調べたら、「レッドシダー」って言う杉の板だけで天然の防虫剤としてAmazonとかで売られていました。
【乾燥方法で変わる柱の強度】
そして、これからこの木を乾燥させる訳ですが、これが「強くて丈夫な柱」をつくるために一番大事なところになります。
木材の乾燥方法としては外で天日干しをして乾かす「天然乾燥」がありますが、この方法だと天候にも左右されながら、乾燥するまでに長くて1年以上もかかってしまいます。
そこで現代の建築においては、材料を建築時までに用意するために人工的に乾燥させています。 ここで気にして欲しいのが「高温乾燥」と「中低温乾燥」の違いです。
上の写真を見て下さい。 どちらも杉の芯持ち材を人工乾燥させた家の柱です。 何か違いに気が付きませんか?
左の柱は外側から割れが入ってます。 皆さんお分かりの通りDEFの柱です。 40℃~70℃で乾燥させる「中低温乾燥材」です。
右の柱は外側はキレイですが、木の真ん中が割れていますね。こちらは120℃以上の温度で乾燥させる「高温乾燥材」です。
DEFの柱は宮城県栗原市の「(株)くりもく」さんが伐採から製材まで全てを行ってくれています。 その方法にもこだわりがあり上の写真のような大きな「燻煙窯」で、木のくずや端材を燃やした熱と煙で約60℃の温度で10日間処理して、その後天日干しで2~3カ月間乾燥させて作ってくれています。
アトリエDEFの現場ではキレイな本物の木の色をした柱や梁が見られます。 これは中低乾燥や天日干しで自然に乾燥させた証拠です。
また生きている木は台風などの強風にさらされても、揺れて曲がってまた元に戻ると言う性質があります。 このような、力が加わった際にガマンしないで形を変え、その後すぐに元に戻る性質のことを「弾性」(だんせい)とか「靭性」(じんせい)と言います。
自分はこれを「柔らかい硬さ」と表現してみます。
柱の外側に割れが入る「中低温乾燥」は、柱の芯の部分をしっかりと残して、木本来の持つ柔らかい硬さを残した乾燥方法です。
逆に、一般的に行われる「高温乾燥」の場合は、乾燥の時間も早く外側に割れも入らないのでそういった意味では見た目も良い材料になります。
しかし極端な高温で乾燥させることにより、外側から木の繊維が壊れ固まっていくうちに、一番大切な芯の部分が内部割れをおこしてしまいます。 ちなみに色もちょっと濃くなり少し酸っぱいようニオイもします。
また、外側から木の繊維が壊れカッチカチに固まった硬い柱になるのですが、その柱には先程述べた「元に戻ろうとする柔らかい硬さ」はありません。
そうなると、ある一定の力がかかった時に突然、ボキッ!っと折れてしまうような柱になるのです。 だから一般的な「高温乾燥材」でつくる家は、金物もたくさん使ってとにかく全体でガッチガチに硬い家にしているのです。 力を逃がそうと言う概念はありません。
マンガ「北斗の拳」に登場した、主人公のお兄さんお二人「ラオウ」と「トキ」を思い出す。 ほっしーです。 (脱線しないように、今年はマジメに書くんだろ)
こういう理由で、自然の木の持つ「柔らかい硬さ」を活かすには、やはり「木組み」という方法が一番いいのでしょう。 木が割れたり、木組みの部分に少しあそびがあったりするのは当たり前。 それだからこそ木本来の持つ性質が活かされて、地震が来ても元に戻ってくれる。
昔から日本の大工さん達は、長い経験の中でこういうことを理解していったのですね。
私たちアトリエDEFは日本の伝統工法を大切にしながら、もちろん現代の耐震知識も加えて、しっかりと構造計算を行いながら地震に強い建物をつくっております。
長い文章をお読みいただきありがとうございました。
次回は【DEFの基礎構造】【耐震等級とは】についてお話いたします。