土壁研究 -ぼくのべと修行 4ページ目-荒壁土
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ではでは、先日お話した荒壁土が、
小坂商会さんではどんな風に作られているのか、
についてご報告いたします。
まず土ですが、これは山からとってきた粘土だそうです。
粘土ならなんでもいい、というわけでもないらしく、
例えば、田んぼの土はダメだそうです。
何故なら、田んぼの土には農薬が入っているから。
その農薬の成分が、家の壁に塗る際に、柱や梁に、
変なシミを残す原因になってしまうから、というのです。
そんなわけで、小坂商会さんで使うのは山の土。
じゃあ山の土ならなんでもいい、というのでもなくて、
やっぱり土壁に向いているものとそうでないものがあるそうです。
過去に、土をとっていた山を変えなければならなくなった時には、
いろんな場所の土を使って、練っては塗り、土を変え、練っては塗りと、
苦労したんだとか。
良くない土を使うと崩れてしまうらしく、
いろいろ試して、ああ、これなら行けるね、と今の土に落ち着いたそうです。
こればっかりは試して見ないと分からないらしく、なかなか奥が深いみたいです。
土についてはまた後日、調べて試して詳しくお話できたら、と思います。
前置きが少し長くなりましたが、この土を練って荒壁土が作られます。
粘土なので乾いていてもやや固まり気味。
まずは機械で砕きます。
三ヶ所の歯車で砕かれながら、次はベルトコンベアに送られます。
斜めに付いているベルトコンベア。
そのため大きな石や砕ききれなかった土の塊は、
下の方にコロコロ転がって選別されます。
こうやって細かく混ぜやすくなった土が、
次は円形のプールのような場所に運ばれます。
この中で水と一緒にくるくるバシャバシャ混ざります。
横方向に回転しながら撹拌する長い棒と、
縦方向に回転しながら土を押しつぶすローラー。
この二つの仕組みで、始めはつぶつぶの土が、水と一緒になってとろとろになっていきます。
ここから先が職人の技の見せ所。
土の分量と水の分量を見極めて、土を適度な状態に。
水は多すぎても少なすぎてもだめ。
特に少なすぎると、土が重くなって大事な機械が壊れてしまします。
一度につくる荒壁土の量が多くてもダメ。
過不足ないことが大事な調整です。
土がしっかり練れたら次は藁が入ります。
前回もお話した壁土にとって大事な藁苆。
1㎥のベトに対して大カゴ2杯分、だいたい0.5㎥くらいの量が入ります。
こんなにどっさり!
藁が入るとまた少し土が重たくなり、機械の動きが鈍くなります。
ここでもまた少し水を加えての調整が入ります。
「ここでね、こうするんだからね。」
逐一語尾に「ね。」を付けて教えてくれる正子さん。
ひょいひょいと軽快に、とっても優しく教えてくれます。
そんなこんなでできる荒壁土。
最後はポトポトに下に落として、出荷までしばらく寝かされます。
何かセンサーや計量器が付いているわけでもなく、
職人の経験と勘でつくられる壁土。
ものづくりにおいては何事も同じなのかもしれませんが、
こういう場面に出くわす度に、
ああ、人間てすごいなぁ。
って、思います。
0と1だけのデジタルでは表現できない、そんな能力を人間って持っているんですね。
……。
「じゃあ次はあんちゃん(兄ちゃん:つまり僕のこと)一人でやってみてね。」
……。
2回ほどの実演のあと、そういってすぐさま、僕にも土を練らせてくれた正子さん。
結果はもちろん、、、
機械を壊さないようにとビビりすぎた挙句、
水っぽくなってしまった荒壁土。。。
「腹下したみてぇだな……。」
と、正子さん。。。
「ま、そんなすぐに出荷するわけじゃねぇし、二三日したら水も抜けるからだいじょうだ。」
……。
まだまだ人間の能力低めな、工事部の漆戸航でした。。。