土壁研究 -ぼくのべと修行 5ページ目-中塗り土のおさらい
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では、お次は日干しレンガでおなじみ、中塗土(なかぬりつち)のご報告。
の前に、ざっくりと中塗り土についてのおさらいを少し。
中塗り土は、荒壁土の次に塗る土です。
荒壁土と同じ粘土に、
砂と、
藁すさが入ります。
中塗り土は粘土に比べてかなり砂の割合が多いものになっています。
これはひび割れ防止のためです。
乾燥後の伸び縮みの少ない砂を多くいれることで、
中塗り土は乾燥した後も割れの起こらないように調整されています。
仕上げの漆喰の下地であったり、そのまま仕上げに使われる中塗り土なので、
荒壁土と違い、乾燥後の表面の美しさが重要です。
乾いた荒壁はバリバリにひび割れが入っています。
このひび割れの中に中塗り土を食い込ませるように塗っていきます。
そうすることで荒壁土と中塗り土がかみ合い、剥がれ落ちなくなります。
だから荒壁は割れていなければならなくて、中塗り壁は割れてはいけません。
さらに、砂が入ることによって、職人さんいわく、塗る時の鏝切れ(こてぎれ)がよくなります。
簡単にいうと、ベッチャリしすぎず取り扱いが楽になり塗りやすくなります。
なんだか土の性質をうまく利用していて、昔ながらの工法って知恵がこもってますね。
また、荒壁土と中塗り土では中に入れる藁すさの種類が違います。
ちなみに荒壁の藁すさはこんな感じ。
中塗り土ではより藁を繊維方向に細かくしたものが入ります。
地域差はありますが、荒壁土に入れるすさを荒壁すさ、
中塗土に入れるすさを中塗すさ、と呼ぶようです。(参考リンク)
小坂商会さんでは、中塗りすさをネコヅタと呼んでいました。
ツタはすさ(苆)の方言ですが、じゃあネコは?
……残念ながらニャンコのことではありません。
これについてはまた後日、ちょっと小話できたらな、と思っています。
中塗り土は荒壁土と違って長期間にわたって発酵させることはありません。
そのため、中塗り土は練られてから、比較的早く使われます。
とある左官屋さんによると、中塗り土が発酵し過ぎると、藁が分解されて痩せた分、
乾燥時にひびが入りやすくなってしまうらしいのです。
その左官屋さんは中塗り土が発酵しすぎることを「腐る」といっていました。
もちろん左官屋さんによってやり方考え方はそれぞれなので、
それが絶対というわけではありませんが。。
そういえば高校生の時の生物の授業や、大学での食品化学の講義で、
微生物による分解作用で人間にとって都合のいいものを「発酵」と呼び、
都合のよくないものを「腐敗」と呼ぶ、と習ったの覚えています。
なんだか家の材料ではなくて、食べ物の話でもしているようですね。
いつか家を衣服に例えて話をしてみたこともありますが、
衣・食・住、
家づくりのことを学んだり、調べたり、考えたり、やってみたり、
すればするほど、僕達の身の回りの大事なことは、
どこかで根深いところで繋がっているような気がしてなりません。
そんなつながりを感じるたびに、
なにか壮大なものに触れたような気がしてわくわくしてくる、
工事部の漆戸航でした。