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環境はコーヒー1杯から変えられる「森のコーヒー勉強会:導入編」
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- 軽井沢・佐久オフィス
こんにちは!
DEFの中でも、特に話が長いと言われてるわたし(山口)ですが、
はじめにお話しておきます。
今回のブログ・・・長いです!(すみません)
さてさて、みなさん、コーヒーはお好きですか??
わたしは結構好きです。
豆の産地や煎り方、粉の粒の大きさ、お湯の温度、淹れ方、ギアの種類などなど、
組み合わせによって違う味や風味になり、そこに美味しさの正解はなく、
人それぞれの好みを追求できる実験的な部分が面白くて、
ついつい、いろいろと試してみたくなりますよね。
今の時代、カフェやコーヒースタンドだけでなく、スーパーやコンビニなどでも、
味にこだわった淹れたての美味しいコーヒーが飲めるようになりましたが、
そのコーヒー、起源はどこだか知っていますか?
実は、「エチオピア」なんだそうです。
エチオピアに古くから伝わるコーヒー発祥の伝説によりますと、
ある日、山羊飼いのカルディという少年が、
飼っていた山羊たちが飛んたり跳ねたりして興奮しているのを見つけ、調べたところ、
その原因が森の中で実っていた赤い実だったことから、コーヒーが発見され、
眠気覚ましの木の実として、エチオピア全土に広く伝わったとされています。
また、科学的・学術的な観点からも、コーヒーはエチオピア発祥説が有力だそうで、
コーヒーの品種の中でも特に美味しいと評価され、
世界で一番飲まれている「アラビカ種」の原種(祖先種)は、
エチオピアにある森の野生のコーヒーではないか・・・と言われています。
いよいよ(やっと)本題ですが、
「森」と「コーヒー」、この二つのキーワードが気になり、
先日、東京のエチオピア大使館で行われた「森のコーヒー勉強会」に参加してきました!
この勉強会は、月1回の4回講座をなっており、まずは導入編ということで、
エチオピアのこと、森のコーヒーのことについて勉強しました。
まず最初は、京都大学でエチオピア原産の作物「エンセーテ」を30年以上も研究しつづけ、
何度もエチオピアに足を運んでいらっしゃる重田眞義教授のお話です。
先生の関心は、人間が植物をどのように見ているのか?
また、植物は人間のことをどうとらえているのか?
ということを考える、民族植物学やドメスティケーション研究の分野だそうで、
ざっくり言うと、植物に音楽を聞かせると育成や味などに変化があることなどから、
植物にも感じるという感覚があるのでは・・・といったことを研究・解明する
分野だそうです。(なにその面白すぎる分野!)
その研究過程で、何度もエチオピアに足を運んでいるうちに見えてきた
「エチオピアにおける有用植物の多様性と人々の暮らし」についてお聞きしました。
エチオピアの風土や人々の暮らしと食べ物の関係性、伝統や文化のお話から、
世界中の様々な分野の研究者がコーヒーの起源について調べてきたお話など、
とても興味深いお話が盛り沢山だったのですが、
中でもわたしが驚いたのは、世界中にコーヒーを作っている国はたくさんあるのに、
国産のコーヒーを日常的に飲んでいるのは、エチオピアの人々だけだと言うこと。
エチオピアには、コーヒーを飲むことを儀式化した
「コーヒーセレモニー」というものがあります。
日本でいうところの茶道のように、ちゃんとした作法や手順、道具があり、
その一つ一つに思いが込められています。
エチオピアにとってコーヒーの文化は、6世紀ころから始まったと言われており、
日本でいうところの日本茶、イギリスでいうところの紅茶と同じで、
国を代表する飲み物をして親しまれ、コーヒー豆の国内消費量は80%にも及ぶそうです。
ですが、外国ではスペシャリティコーヒーと呼ばれるほど価値の高い
貴重なアラビカ種のコーヒー豆であっても、
国内ではあまり価値のあるもの(お金になるもの)として見なされておらず、
それ以上に価値の高い作物を作るために、野生のコーヒーが生える森が畑へと開拓され、
どんどん森林が減少しているという深刻な現状があるそうです。
二番目のお話は、JICA(独立行政法人 国際協力機構)のスタッフによる、
エチオピア国と一緒に行っている「付加価値型森のコーヒー生産・販売を通じた
持続的な森林管理支援プロジェクト」についてでした。
この技術協力プロジェクトは、
減少するエチオピアの森林を守ることを目的に、2003年からスタートしました。
数年間にわたる森林の調査・研究により、森で育つ野生のコーヒーの遺伝的多様性は、
世界にとっても貴重な文化的価値の高いものであることがわかり、
また、その貴重な財産を守ることは
エチオピアの森林保全にも繋がることがわかりました。
そのためには、国内外での「エチオピアの森のコーヒー」の経済的価値を高めることが
必要不可欠であり、JICAは現地の人々とさまざまな取り組みを進めているそうです。
現在、特に苦労しているのが、伝統的な森のコーヒーの生産方法を守ること。
この取り組みと近年のコーヒーブームにより、
海外資本が参入してきたことやコーヒー農家の収入が上がったことで、
より生産性の高い改良種による高密度の植林や、
生産ラインの機械化といった近代的な大量生産への考えが広がり、
伝統的な森のコーヒーとの差別化ができなくなっているそうです。
こういった近代化による発展途上国での問題は世界中で起きており、
そのためにたくさんの森が失われてきました。
主な消費者である先進国の人々の選択で、こうした問題を解決することができます。
世界中の多くの人にエチオピアの森林コーヒーに関心を持ってもらい、
品質・文化・環境などさまざまな方面から「森のコーヒー」のブランド的価値を
高めていくことに力を入れているのだそうです。
この勉強会もそうした取り組みの一つ。
伝えることはとても大切だと、改めて気づかされました。
次にお話をお聞きしたのは、アフリカ理解プロジェクトの白鳥くるみさん。
このイベントを主催した団体の代表の方です。
白鳥さんは、森のコーヒーや伝統的な手工芸品の販売をしたり、
アフリカ文化がわかる雑誌や本の制作、お土産などの商品開発を行ったりなど、
日本や他の国に、エチオピアのことを知ってもらうための架け橋をたくさん作って、
現地の教育的支援や女性の社会的地位の向上のための支援しています。
エチオピアの人々の実際の暮らしについてのお話。
なんとエチオピアは、アフリカで唯一植民地にされなかった国だそうで、
そのため社会インフラが脆弱で、伝統的な文化や考え方が根強く、
世界のビジネススピード感覚が全く通用しない部分は多々あるようですが、
他の国では味わえない独自の豊かさを、エチオピアの人々から感じるそうです。
「ここにある豊かさという価値を失わずに、その価値を理解して、
それを財産にして、世界と繋がってもらいたい」
それを一番感じるのが、伝統的なコーヒーセレモニーなんだとか。
最後は実際に、
エチオピアの森のコーヒーを簡易的な「コーヒーセレモニー」でいただきました!
民族衣装を身に纏ったエチオピアの方が、生豆を焙煎して、縦につく臼で細かく砕き、
ジャバナと呼ばれるコーヒーポッドで少し煮出して・・・と説明しながら、
手間をかけて淹れてくれる様から、おもてなし感がものすごく伝わります。
(実際のコーヒーセレモニーは、1〜3時間くらいかかるらしいです・・・)
では、いただきます・・・・・・わ〜美味しい!!
香りはすごくフルーティで優しくて、
さっぱりとした酸味の奥の方に、コクのある苦味が後からぐぐぐとくる感じです。
一緒にいただいたエチオピアの野生の蜂が作る蜂蜜と一緒に飲むと、
一際苦味が際立ち、口の中がよりマイルドになった感じに・・・。
お話を聞いた後にいただいたせいもあって、
コーヒー1杯から、遠く離れたエチオピアの人の温かさと愛情深さを感じました。
今回の勉強会で学んだのは、
「森のコーヒーの多様性を守ること一つとっても、
とても複雑な問題がたくさん孕んでいて、まったくシンプルでない。」
ということです。
守るべきは、文化や伝統なのか、自然環境なのか、人の暮らしなのか・・・。
答えは一つではなく、それぞれのバランスを刻々と進む時の中で、
常に保ちつづけていなくてはいけないのかな、と思います。
これはエチオピアだけの問題ではなく、
世界のどこでも同じように悩んでいる問題で、もちろん日本でも。
そして、DEFが日本の山に感じる問題もほとんど同じです。
エチオピアの森林コーヒーが売れることは目的ではなく、
さまざまなものを守るための手段であることと同じように、
わたしたちも住宅や木工品を通じて、日本の森を守りたい。
しいては、未来の子どもたちへ、もっと良い環境を残しつなげたい。
そんな思いをより一層強く感じたイベントとなりました。
.p.s【環境問題による影響について】
コーヒー業界では、今後の気候変動により栽培地域の環境が変化することで、
2050年には世界のコーヒー栽培適地の面積が半減するという
「コーヒーの2050年問題」が懸念されおり、それによって、
エチオピアの森のコーヒーのアラビカ種も半分以上が絶滅すると言われています。
コーヒーは、「コーヒーベルト」と呼ばれる熱帯地域の高地が主な産地ですが、
このコーヒーベルトが減少し、原種が失われるということは、
いずれ、コーヒーそのものがこの世から無くなってしまうかもしれないそうです。
そうならないためにも、地球温暖化への対策は急務であると同時に、
人為的な森林減少をなくすためにも、
世界中の「コーヒーを飲む」意識が変わっていくことも大切だと思いました。
ぜひ、コーヒーを飲む際には、
産地や生産者、労働環境など、私たちの手元に来るまでの背景にも目を向けて、
選んでみてくださいね〜!
(ここまで読んでくださり、ありがとうございました 涙)