yatsugatake
無為に過ごす。
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「あぁ〜ぁ。一日を無為に過ごしてしまった」
今日は、アレもしよう。コレもしよう。と、はりきっていたのに
結局、何もしないまま、もう日が暮れていく…
そして、苦い後悔を噛み締めながら、布団をかぶる。
わ・か・る… と深く頷くあなたの顔が見える。
一日の予定を完璧にこなして、清々しい充足感と共にシーツに潜り込みたい。
そんな充実した理想の日々を送るには、どうしたらいいのか。
「超・時間術!」や「最強の自己コントロール術!」といった類いの本でも読んでみるか。と通販サイトのボタンをポチっとする前に、ちょっと待ってほしい。
なぜ、アレもして、コレもしなければ後悔してしまうのか。
なぜ、アレもして、コレもしなければならないと思っているのか。
もちろん、最低限の生活のアレコレはある。子どもがいれば尚の事。
しかし、何か有意義なことを為さねば充足感は得られない!という考えを捨ててみる。
そうすると、番う鳥の声や風に揺れる葉擦れの音、水田の蛙の鳴き声や巣づくりをはじめた蜂の羽音が聞こえてくる。その次は、吸って吐く自分の呼吸の音や胸に響く鼓動の音に耳をすましてみる。
両手を眺めてみる。赤い指先からだんだんと白くなる手のひら、親指の付け根に這う青い血管。水の引かれた田んぼから霞雲の空を見上げ、夕暮れに刻々と変わる色を眺める。
そうしていると、芽吹く花木や一斉に動き出した鳥・虫と自分を隔てるものは何もないことを思い出す。ただ、その生命の営みに驚愕する。そうして一日を過ごす。
ぐっすりと睡る。