薪ストーブを使うなら知っておきたい薪の調達方法と木の種類
パチパチと音を立てる炎を静かに眺める時間。寒冷地でも頼りになる高い暖房効果を持ちながら、身体の芯からじんわりと暖めてくれる薪ストーブは、都会暮らしからの移住なら一度は使ってみたいと思うもの。
でも”薪は値段が高い” ”毎年一冬を越せる分の薪を集めるのが大変そう” ”薪割りは体力的にハード” そんな声を聞くと二の足を踏んでしまう気持ちも分ります。
今回は、暮らしエリアに関わらず、共通の基本的な薪の調達方法をまとめました。当たり前だけど薪ストーブを使うために必ず必要な薪。集め方から木の種類の違い、薪棚の必要性など一通り押さえて安心して薪ストーブのある暮らしを始めてください。
①すぐに燃やせる薪を買うか、②木を集めて自分で薪割りをするか
薪の調達方法は大きくこの2つ。まずは①から。よく「一束oo百円」で売られている薪を見かけますが、基本的に地域のホームセンターやスーパーで購入できます。しっかりと乾燥しているだけでなく、使える分だけ買ってすぐに燃やせるのが一番のメリット。
しかし、毎日使うとなるとどうしてもランニングコストが高くなってきます。1日中燃やすとすると3〜4束は必要です。朝と夜だけ少し燃やしたり、ファンヒーターと併用する方法もありますが、メイン暖房として薪ストーブ一本はあまり現実的ではありません。さらに寒さが本格化する秋冬にはお店に在庫がないケースも。
つまり長く薪ストーブと付き合っていくには、ランニングコストを押さえ、かつ安心できる量の薪をいかに確保できるかがカギなんです。
それが、②の自分で調達ルートを開拓して薪割りをする方法です。
まずは地域で薪を専門に販売している方を見つけましょう。多くは、軽トラック1杯数万円のように売られており、まとめ買いをすることでコストを下げることができます。業者さんにもよりますが、1束あたり1/2〜2/3のコストで購入可能。大体1シーズン軽トラック3〜4杯は必要なのでこのコストの差は大きいです。
業者さんの中には、地域で伐採される木の情報にも詳しい方も多く、頼りになる方を見つければ在庫面も安心です。他にも工務店や薪ストーブ業者さんにも薪を取り扱っているか確認してみましょう。
さらに最もコストを下げられるのが「原木」と呼ばれる丸太の状態で購入し、チェンソーを使って好きな長さに玉切りをして、斧で割る方法。時間と体力が一番必要ですが、楽しんでライフワークに取り入れている方もたくさんいます。
※チェンソーで丸太を玉切り。薪割り前に30cm〜40cm程度の好きな長さにカット。
地域で長く暮らしている方であれば自然と伐採業者さんとも繋がりもでき、無料で引き取りに行くなんてケースも(ちなみに軽井沢には、貯木場があり町民の方であれば無料で薪を取りに行くことができます!)。
チェーンソーや斧、軽トラックなど、初期投資は必要ですが、上手にライフワークに取り入れることができれば、薪ストーブのランニングコストを限りなくゼロにすることが可能です。
ただし、一つだけ注意点があります。薪割りをしてから1〜2年ほど乾燥させましょう。切りたての状態は水分を多く含んでいるため燃えづらく、水滴の元になる水蒸気は煙突を錆びさせてしまいます。自分で薪づくりをする場合は、薪を乾燥させるための薪棚の設置も忘れてはいけません。
(出典:https://re-wood.me/)
「薪の自給自足には興味あるけど最初はハードルが高い」という方は、移住初年度は、乾燥薪を買って冬をしのぎしつつ、少しずつ準備をして今後の冬暮らしに備えるのがおすすめです。エリアによっては移住者と地域の方が協力し、薪情報のシェアと薪割りをするコミュニティもあるのでチェックしてみてください。
火力の強い「針葉樹」と火持ちの良い「広葉樹」どちらを選ぶか
薪になる木の樹種は大きく分けて2つ。長野県の森で多いカラマツやアカマツ、モミなどの「針葉樹」と、クリやサクラ、シラカバ、ナラなどの「広葉樹」に分かれ、好みの燃やし方や薪ストーブによって使い分けるのがコツです。
値段は広葉樹より針葉樹の方が安く火力も高いのが特徴。木の密度も荒く、初心者の方でも簡単に火をつけることができます。特にカラマツは樹液のヤニが多く、それが燃料となりよく燃えてくれます。
※針葉樹の中でも長野県で多くみられるカラマツ。
ただしすぐに高温になりやすいため、薪ストーブを傷めてしまわないよう一度に薪を入れすぎないように注意しましょう。
薪ストーブによっては針葉樹を推奨していないタイプもあり、特に鋳物素材との相性は良くないと言われています。一方、厚みのある鉄やステンレス素材を使って針葉樹に対応したストーブもあります。長野県はカラマツ・アカマツが多く、対応したストーブなら薪の在庫の心配も少なくて済みますよね。
一方広葉樹は火持ちの良さ、持久力が魅力です。じっくりと火を眺めて楽しむ、そんなスタイル向きです。広葉樹は針葉樹に比べて木の種類がたくさんあり、一つ一つ燃やしてみて好みの木を見つけるのも楽しみ方の一つ。基本的にどの木も薪として燃やすことができます。
※広葉樹の中でも白い樹皮で人気のシラカバ。地域によって集まる樹種は様々です。
広葉樹の中でもナラは薪の王様と呼ばれ、最も火持ちに優れています。他の薪と比べてもわかるくらいずっしりとした重さがあり、木の密度の高さが燃費の良さに繋がっています。その分、値段も高価ですが、燃費の良さは長い目で見てランニングコストを抑えることにつながります。
おすすめは、最初の焚き付けは針葉樹を燃やし、火の大きさが落ち着いたら、広葉樹に切り替える方法です。購入するコストを下げつつ、なるべく長く薪を使い続けることができます。特に大きめに割ったナラの薪を寝る前にゴロっとストーブに入れておけば、朝まで部屋を暖かく保ってくれます。ナラは、熾と呼ばれる灰になる手前の炭の状態からの火持ちが非常に高く、こうした使い方が可能です。
長野県のように寒さの厳しい地域で暮らすにはパワーのある薪ストーブの存在は大きく導入したいところですが、調達方法をどうするかはユーザーの共通課題。
暮らし方やお仕事の忙しさによって薪との付き合い方は人それぞれですが、これからの長い薪ストーブの暮らしを楽しむためにも、ぜひできることからぜひ始めてみてください。地域の木材で暖を取ることは、その地域での暮らしをより深く味わい考えるきっかけにもなりますよ。