みずみずしい6月の軽井沢
清々しい季節が過ぎ、しっとりと落ち着いた雰囲気が漂う6月の軽井沢。空から降ってくる雨音のリズムが響く森では、木々が新緑から色濃く姿を変え、鬱蒼とした緑に覆われる。
梅雨時期ということもあり、観光客が少なくなった街中で見かけるのは、地元の人か別荘利用の人ばかりで、主要な道も、夏のシーズンにもかかわらず、この時期だけは少し渋滞が緩和される。
6月といえば、南軽井沢のローズガーデンが見頃なのと、星野リゾートのハルニレテラスでは『アンブレラスカイ』というイベントが毎年開催され、静かな賑わいを見せているが、人気の少ない街中に少し物寂しさも感じる。
それでもなぜか、6月の軽井沢に惹かれてしまう。
例えばそれは、夕立ちのあとに鼻の奥をむわっと覆う緑のニオイや、自然の並木道をつくり出すヤマボウシやツツジの、雨を纏った鮮やかで少し色っぽい姿。
今の軽井沢の生みの親である宣教師A・Cショーもきっと、この6月のみずみずしい姿を見ていたはず。
軽井沢らしい霧も、6月は頻繁に発生する。別荘地の立派な庭を苔たちが装う一方で、湿気に覆われた家での暮らしは、少し気を遣う。それでもここに住む人々は、この霧をミストシャワーと愛着を持って呼んでいる。もうすぐ始まる夏を心の奥で待ちわびるように。
6月のとある1日。夕方、急に雲行きが怪しくなり、突然雨が降り出した。暑い日が続くと思えば急に肌寒くなるから、半袖で出かけたことを少しだけ後悔しつつ、視界の悪い砂利道を、水溜りを弾きながら車を走らせ帰路に着く。
玄関の扉を開けると、夕暮れ時かもわからないほど暗いリビングの向こうでは、ウッドデッキを激しくたたく雨音が聞こえる。明かりが付き、家の中を見渡すと、無垢の木のぬくもりと土間の薪ストーブの変わらない佇まいにほっとする。
少し落ち着いたら、コーヒーを淹れて冷えた体を温めよう。雨上がりを待つようなこの時間がずっと続いてほしい。